1998年ノーベル医学・生理学賞 「ガス」が命を守る?

1998年ノーベル医学・生理学賞 「ガス」が命を守る?

「ガス」が命を守る?

19981012日、スウェーデンのカロリンスカ研究所から驚きのニュースが届きました。ノーベル生理学・医学賞は、ロバート・F・ファーチゴット、ルイス・J・イグナロ、フェリド・ムラドの3名に共同授与されることが決定。受賞理由は「心血管系におけるシグナル伝達分子としての一酸化窒素(NO)」の発見です。

一酸化窒素と聞くと、車の排気ガスなどの公害物質を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかしこの小さな分子が、実は私たちの体内で重要な役割を果たしているのです。

ファーチゴット氏は、血管の内皮細胞が薬物に対して異なる反応を示すことに着目して、1980年、アセチルコリンが血管を拡張させるのは内皮が損傷していない場合に限ることを証明し、未知のシグナル分子「EDRF」の存在を示唆しました。

一方、ムラド氏はニトログリセリンなどの血管拡張剤がNOを放出することを発見して、ガスが細胞機能を調節するという新しい概念に挑みました。

そしてイグナロ氏は、EDRFの正体がNOであることを突き止め、ファーチゴット氏とともに1986年の学会で発表し、これが世界中の研究者たちの関心を集め、NO研究の幕開けとなりました。

NOは血管を拡張し、血圧を調整するだけでなく、神経伝達や免疫反応にも関与して、脳を刺激し、感染症から体を守るなど、その働きは多岐にわたります。わずか10秒で分解されるほど不安定なこの分子が、私たちの健康を支えているとは、まさに生命の神秘ですね。

この発見は、ガスが生体内で情報を伝えるという新しい生物学の扉を開いた瞬間でした。

投稿者: MPA広報担当者 – 2025年 12月 09日